焼きそば
ある日、大阪の商店街で「焼きそば」という名前の新しい店が開店したという噂が広まりました。
「あの店、行列できとるってやろ!」「ほんまかいな、新しいとこは人気あるわぁ」
そんな話を聞いた浪花の太郎という男が、早速その店に向かいました。
店の前には長蛇の列ができており、太郎も並んでみることにしました。
しばらく並んでいると、やっと太郎の前の人が注文を終えて、いよいよ太郎の番がやってきました。
「いらっしゃいませ! 焼きそば、何にされますか?」
店の女性スタッフが愛想よく声をかけてきました。
「あー、普通でいいよ。ところで、この店の名前って『焼きそば』って言うんか?」
太郎は疑問に思ったことを尋ねました。
「はい、そうなんです。当店は『焼きそば』という名前で営業しております。」
スタッフが応えました。
「そうなんや。でも、なんかすごいシンプルな名前やなぁ。もっと洒落た名前やろうに。」
太郎は店の名前を思いつめていました。
「でも、そのシンプルさが逆に人気の秘密やかもしれませんよ。」
スタッフが微笑んで言いました。
太郎は、そう言われて少し納得したので、普通の焼きそばを注文し、満足そうに食べていました。
「やっぱり、名前がどうのこうのより、味が一番大事やなぁ。」
太郎がひとりごちました。
こうして、大阪にまた一つ、新しい名物が生まれたのでした。